インタビュー

ゼニマックス・アジア ロングインタビュー

2008年7月22日 (火)

ゼニマックス・アジア 高橋氏インタビュー 文書バージョン

―本日はブログParental Rock n Trollのポッドキャスト第五十回目を記念しまして、ゼニマックス・アジアの高橋徹氏にお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

高橋氏:
 ゼニマックス・アジアの高橋です。よろしくお願いします。

―本日は色々とご質問を用意させていただいておりますが、まずはそれに先立ちまして、高橋様ご自身のプロフィールと経歴をよろしくお願いします。

高橋氏:
 私はゲーム業界に入って大体8年ぐらい経ちます。はじめはカプコンの第六開発部というところの所属で、主に洋ゲー担当のプロデューサーとして4年半ほど在籍していました。
 その後スパイクに移籍し、同じく海外ゲームのローカライズ担当として海外グループのマネージャーをやっていました。そして今年の二月から、ゼニマックス・アジアのゼネラルマネージャに就任しました。

―本日は高橋様のお考えと、今後の活動について、一般的な雑誌インタビューとは違った、洋ゲーヘビーユーザ向けの内容でご説明いただけたらと思います。

―まず、来る7月24日にリリース予定の「Bully」についてお話を聞きたいと思います。
このタイトルを獲得した理由はどのようなものでしょうか。

高橋氏:
 私はカプコン時代に「GTA3」,「GTA ViceCity」の国内販売を担当したのですが、「Bully」はその「GTA」と同じディベロッパーのRockstarGames製作のタイトルです。平たく言ってしまえば学園版GTA、といった感じのゲームですね。
 「GTA」も非常に面白い作品なのですが、やはり日本向けに考えますと、暴力要素というのはマイナス面として働いてしまうこともあります。そういった背景の中で、「Bully」は「GTA」の良い部分、ゲームシステムなどの部分を引き継ぎながら、あまりダークなストーリーでなく、暴力表現もそれほどない、というところで非常にウケるのではないかと思い、今回販売を手がけることにしました。

―暴力や残虐表現とかではなくて、イタズラやケンカのような、ヤンチャなテイストであると。

高橋氏:
 そうですね。ストーリーも明るくコミカルなものになっています。

―日本で「Bully」を展開するにあたり、どのような購入層にアピールしていきたいとお考えですか。

高橋氏:
 ロックスターファンやGTAファンの方は当然のことながら、メインになるのは箱庭系アクションゲームファン、もうすこし広げますと洋ゲーファン全般です。そして、GTAよりももう少し幅広いアクションゲームファンにもアピールしたいと考えています。

―ゲームで描かれる世界観は、アメリカのスクールムービーをリスペクトしたような内容で、そのスクールカーストをゲームに持ち込んだところが新しい点だと思いますが、日本の学園物との違いや、共通点などは。

高橋氏:
 私は小学校4年から高校卒業までアメリカに居まして、ジョックスやナーズ、プレッピーが居たり、というのはどこの学校でも見られる光景なんです。アメリカの普通の高校の、あたりまえの生活が「Bully」には描かれているんですね。
 ほかにも、冒頭でお母さんが再婚して、子供を寄宿制の学校にぶち込んで・・・というシーンのように、70、80年代のアメリカの社会問題を描いているところもあります。そういった部分が、当時アメリカに居た人からは非常に共感できて、そういえば昔そんな社会情勢だったなぁ、というのが分かるんです。
 「GTA」も単にブラックユーモアではなくて、その当時の社会問題を映し出しているゲームになっている。ロックスターのストーリーテーリング手法はすごくよく出来ていて、単にテレビ番組的な面白さではなく、社会問題のようなところもきちんと触れているんですよね。そういうところが面白さに繋がっているのだと思います。

―「Bully」も「GTA」も、ある一定のカルチャーをゲームという媒体で表現しよう、という意思があると思います。今回はアメリカの学校文化のすべて、といった感じですが。

高橋氏:
 そうですね、その時代のティーンエージャーを取り巻く環境を描いている作品です。

―では、折角ですので雑誌では触れていなかった項目についてもご質問させていただきたいと思います。まず、このブログを見ている人がもっとも気にしていることだと思いますが、「Bully」を日本で発売するに当たって削除せざるを得なかった要素はあったのでしょうか。

高橋氏:
 一切ありません!

―ありがとうございます!素晴らしいです。

高橋氏:
 はい、皆さんが気になっている遊園地の「出来事」もすべてそのまま入っています。

―この「Bully」がいままで出せなかった主な理由として、日本ではイジメ問題がシビアになっているので、その辺で苦しいのかなと思っていたのですが。

高橋氏:
 そうですね、我々は当然イジメを肯定するつもりはないですし、ロックスターのタイトルだ、ということと、その題名で世間は過剰に反応していることは事実です。
 しかし、プレイしていただくとよく分かると思うのですが、「Bully」はイジメをするゲームではありません。どちらかというとイジメられている子を守ったり、イジメが「存在する」世界で、いかに立ち回っていくか、というテーマのゲームなんです。イジメをしかける側のゲームではない、ということをCEROさんやファーストパーティさんにきちんと説明をして、理解をしていただく必要があったので、その辺のハードルは高かったです。

―CERO様のお話が出ましたが、雑誌の第一報でCERO区分は「C」目標だったようですが、最終的に「D」になった、というところは。

高橋氏:
 実はC区分で一旦は発表をしていたのですが、こちらのほうで見落としがあり、Cで「暴力表現有り」だったのがDの「ギャンブル」という区分になりました。
 CEROさんのレーティング基準で、Dにひっかかる表現がギャンブルだった、ということですね。遊園地で賭け事が出来る、という要素があるということをきちんと提出できていなくて、最終的にDに変更となった次第です。

―CERO様もかなりお調べになっていると。

高橋氏:
 ただ、私も語弊が無いように言いたいのですが、CEROさんのやっていることに対しては非常に共感していますし、会社としても個人的にも、彼らにはがんばってもらいたい、と思っています。やはり、きちんとした中立の存在のレーティング機構がないと、我々も仕事がやっていきづらいということもありますので、読者の皆様にもCEROさんを応援していただきたいと思っています。

―D区分より上はZですので、そうなるとゲームショップなどでも高いところに陳列されることになってしまいますが、「Bully」はそういう点でお求め易いところに落ち着いたと。

高橋氏:
 そうですね、ただ現実問題、「Bully」の中では人が死ぬわけでもないですし、過剰な性的な表現があるわけでもないですし・・・どちらかというと面白おかしい雰囲気のゲームですので、正直、Dでびっくりしているぐらいです。

―今回はPS2版と、海外では「スカラシップ・エディション」として発売されたXBOX360版をリリース予定でいらっしゃいますが、海外で販売されたWii版に関しては取り扱わないのでしょうか。

高橋氏:
 私はこれまで数十本タイトルを出しているのですが、Wiiであったり、任天堂様のプラットフォームであったりすると、洋ゲーが売れない、という事実があります。やはり客層が違う、という背景があるのだと思います。

―続きまして、「Bully」のほかに御社でリリースを予定されている作品についてですが、まず「Star Trek: Concest」「Star Trek: Legacy」についてお願いします。

高橋氏:
 両方ともスタートレックを題材としたリアルタイムストラテジーですが、単純なストラテジーとして捉えると正直楽しめません。スタートレックの番組をご覧になったことがある方だとよく分かると思いますが、基本的には宇宙戦で、ワープ中は何も出来ないとか、戦闘もフォトン・トーピードとフェイザーのみ、という設定上の制約があります。つまり、戦闘そのものが面白いというよりかは、歴代のスタートレックの船を操ったり、テレビシリーズと同じ艦長の声が聞けたりと世界観に浸る、というところに楽しさがあるゲームですね。

―スタートレックの中でのディテール、ワープ中は何も出来ないとか、シールドの張り合いで戦闘が進行するとかを楽しみつつ、クリンゴンのバード・オブ・プレイにも乗れると。

―つづいて、もうしばらく先になりますが、「Fallout3」についてもお願いします。

高橋氏:
 この作品が今年の弊社の目玉になります。欧米では今年の秋に発売を予定していまして、E3でも展示をすることになっています。日本でいつ発売か、というところは残念ながらまだ決定はしていません。
ただ、雑誌でも告知している通り2008年中なので年末近辺、ということになります。同時発売を目指しつつ、少し難しいかな、というところなので大体そのくらいを考えていただければなと思います。
 そして、いったいどんなゲームなのか、という話ですが、簡単に言えばオブリビオンのスタッフが手がける次のRPG、ということになります。基本的なゲームシステムはオブリビオンのままと理解していただいていいと思います。
 ゲーム開始直後はキャラメイキングとチュートリアルを兼ねて一本道のストーリーを15分ほど追い、その後、ちょうどオブリビオンの下水道を出たところのように、オープンエンドのワールドに出る、というようなつくりになっています。
 今回はエンディングが複数用意されていて、数百も存在するようです。私もいま一生懸命ゲームをやっていますが、なにせ膨大なのでまだ冒頭の部分しかやれていません。でも、かなり面白いです!期待していてください。

―オブリビオンの中世ファンタジー世界から、50~60年代風の音楽やポスターがありながら、実は核戦争後の近未来、という特徴ある世界観になるわけですが。

高橋氏:
 50年代の文化のまま未来に進んで、そこで核戦争が起きて・・・・という設定なので要所要所に50年代っぽい雰囲気が出ています。50年代というのはアメリカとソ連が冷戦時代真っ只中で、キューバ危機の少し前あったりと、アメリカの核に対する恐怖みたいなものがあった時代なんです。そのイメージがあるので、50年代をモチーフにしていると。

―現代のIFの世界観があるということですね。

高橋氏:
 そうですね。

―それでは、海外ゲームの日本展開の全般に対してお伺いしたいと思います。最近やっと洋ゲーのよくない先入観が払拭されてきていると思いますが、依然、知名度の低さというものはあると思います。それについては、これからどのように対処していこうとお考えですか。

高橋氏:
 確かに、日本のゲーム業界の中ではどうしても洋ゲーに対するアレルギーみたいなものがまだまだありますが、それでも私がこの業界に入ったころ、「GTA3」以前から比べるとだいぶよくなったと思います。
 とくに次世代機になってからは、さらに改善されてきていて、どちらかというとユーザーさんのほうが「洋ゲーだから」とか、「日本のゲームだから」とかの区切りでいちいち考えずに、良いものは良いし、面白いものは面白い、という視点でゲームを選んでいただけるようになってきたかな、と実感しています。

―私のような洋ゲーファンですと、逆に“洋物っぽさ”のテイストを求めて買うこともあるのですが、海外のゲームに対して、日本にはない尖った要素、魅力などについては。

高橋氏:
 一番の大きな違いは、海外の場合、ゲームはエンターテイメントの一部である、というところですね。日本だとどうしても子供向けの玩具から派生しているというところがあります。

―歴史的にもおもちゃのポジションですね。

高橋氏:
 海外の場合は音楽であったり、ファッションであったり、その時々の政治的な問題であったり、そういういろんな要素をゲームに取り入れていて、本当にインタラクティブな映画といっても過言ではないですね。なので、表現の部分などで大人向けであることは事実ですが、私はそれ以外にも優れている点がたくさんあると思います。

―技術的な面に関しても、描画エンジンや人体の物理制御など、いろいろと発展していると思いますが。

高橋氏:
 正直、技術の部分に関して言うと、多分もう日本は追いつけないぐらい突き放されていると思います。欧米のゲーム業界がすごいのは、技術を各会社が内側に持とうとせず、外に出そうとするところと、技術者の横のつながりが非常に強いところですね。
 それに比べて日本はどちらかというと“職人”を中心に、職人技で作っていくようなスタイルなんですね。逆に、だからこそ欧米の人たちに真似できない突き詰めたものが出来上がることもあります。しかし、職人技だとどうしても「その人」が居ないと出来ない。
 全体論で行くと欧米の考え方の、システマチックに作っていくやり方のほうが効率的であるし、科学的にゲーム開発をやっているので技術の発展の速度が日本と全然違ってきます。

―そのような環境の上で、大人のエンターテイメントとして発展している海外ゲームですが、購入層が大人、というところもあって日本に持ち込まれる際に色々な認識の違いもあり、要素を削られたりぼやかされたり、という規制の問題が起きていますが。

高橋氏:
 これはもうそれぞれの国の文化の違いなどもあるので、海外でOKだったから日本でもOKでしょ、という議論は成り立たないと私は思っています。
 とは言いつつも、今の世の中で、次世代機になってからはリージョンコードによるソフトの地域識別がなくなったりしている中で、日本語版で削ったからといって、日本で出来ないか、というとそんなことは決して無いですよね。
一般論的に規制をするということが一番良い方法ではないと私は考えるので、CEROさんのやっていることをどんどん応援して、レーティングというものを広く世の中の皆さんに理解をしていただいていくことが一番の解決策かと思います。
ZでもDでもよいのですが、大人が買うゲーム、特に規制が色々問題になっているゲームであっても、冷静に考えてみるとゲームだけがそういう表現をしているわけではない。残虐表現が映画の中に無いかとか、テレビや漫画の中にそういう部分が全く無いか、というと決してそんなことはありませんよね。逆にもっとひどい表現がいっぱいある。
 どうしても、まだまだゲーム業界は若い産業なので世間に叩かれやすい、という部分がある、ということも皆さんに理解していただきたいと思いますね。

―確かに私たちユーザーにとってはテレビ・映画に比べてゲームはスケープゴート的な扱いを受けているかな、と感じることもあります。

高橋氏:
 事実そうだと思いますよ。やはりゲームは叩かれやすいメディアであると思うので、「そういうこと」が起きたら皆さんの声を大にして、それは違うじゃないか、と言っていただくと、徐々に変わっていくだろうと。これはなかなかすぐに変わるものではないと思うので、徐々に変えていくしかないかな、という風に思いますね。

―変わっていく、ということですけども、日本において、これからの海外ゲームのマーケットはどんな風に広がっていくのか、というような展望や予測は。

高橋氏:
 う~ん、予測というかあくまで個人的な希望なのですが、ユーザーの方々も面白ければ良い、という認識なってきたので、私は「洋ゲー」という言葉が無くなる日もそう遠くないのではないか、という風に思っています。というか、願っています。

―それが理想の目標、といった感じでしょうか。

高橋氏:
 そうですね。

―では、ゼニマックス・アジア様はこれからどんなジャンル、あるいはどんなテイストのゲームを手がけていきたいとお考えでしょうか。

高橋氏:
 そうですね、基本的には「尖った」ものをやっていきたいと思いますし、私が今まで手がけてきたゲームをご存知の方々は大体想像がつくと思いますけれども・・・。
 今後、ちょっとやっていきたいなと思っている新しいジャンルでは「音楽」がらみのタイトルですね。こう言うと結構狭まっちゃうのですが(笑)

―「音楽」が、キーワードと。

高橋氏:
 はい。

―なかなか面白い情報をいただきました(笑)

―さて、個人的にローカライズしてもらいたいな、というゲームをリストにして用意しました。まず、今回スタートレックのゲームを手がける、ということで、スタートレックは固定ファンが多く、そのファン層にむけてリリースしていきたい、というようなことを雑誌でもおっしゃっていたと思うのですが、同じようにコアなファンが多いカルト・ギャング映画の「Scarface」というものがありまして、それが「Scarface: World Is Yours」としてゲームになっています。こんなような、すこし濃いコアなタイトルも日本で出たらいいな、と思うのですが。

高橋氏:
 今リストを見ているのですが、「Scarface」、「Warriors」、「Mafia2」と。なかなかいいセンいってますねぇ(笑)

―いいセン、というなかなか含みのある(笑)言葉をいただきましたが。

高橋氏:
 実は「Warriors」に関しては、欧米で発売された直後に結構、検討しました。しかし、諸般の事情で出来なかったので、これは厳しいかなと。良いゲームで面白いのですが・・・

―私は原作の映画は見ましたが、ゲームはまだプレイしていなかったので・・・いつの日か、というところでしょうか。

高橋氏:
 そうですね、ただもうPS2なので、商売上(笑)少し厳しいかなと。

―「Warriors」はPSP版も出ていますよ?

高橋氏:
 そうでしたっけ(笑)じゃあもう一度考えてみましょうか?

―ありがとうございます。

―それでは最後に、この記事を読んでいるような、日本の海外ゲームのファンに向けてメッセージをお願いします。

高橋氏:
 これからも、「Bully」を皮切りに海外の尖った作品をどんどんと出していきたいと思いますので、皆さんよろしくお願いします。

―ありがとうございました。今回のインタビューはこのあたりで終わらせていただきます。
私Joeと、ブログParental Rock n Trollは微力ながら、高橋様とゼニマックス・アジア様を応援していきたいと思います。本日はどうもありがとうございました。

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2008年7月14日 (月)

Podcast予告

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Podcast EP50 Coming Soon

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2008年7月 3日 (木)

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